通信回覧板

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5G開設計画から見るau、docomo、Softbank、楽天モバイルの戦略

各社の5Gサービス開始当初はエリアと呼ぶよりはスポットと呼ぶ方がふさわしい程非常に限定的な場所でしか5Gが使えない状況だった。今後各社の5Gエリアは増えていくのだろうか?総務省や各メディアが発表しているデータから各社の戦略を読み解き展開計画を予想してみる。

 

総務省のデータから見る各社の開設方針

下の画像は総務省が公表した各キャリアの開設計画である。各キャリアの割り当て周波数、開設局数からこれからの動向を予想してみよう。

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総務省よりhttps://www.soumu.go.jp/main_content/000613734.pdf

 

ドコモの戦略

割当周波数:3.7GHz/4.5GHz (100MHz)、28GHz(400MHz)

開設局数:3.7GHz/4.5GHz(8001局)、28GHz(5001局)

ドコモは3.7GHzと4.5GHzを100MHzずつ、28GHzを400MHz獲得してる。ちなみにこれらの周波数は全てTDDなので上り下り併せて合計600MHzの割り当てだ。さて3.7GHzという周波数は衛星通信との干渉があるため、干渉を避けるためにキャリアの思い通りの出力で電波を吹けないという弱点がある一方で、4.5GHzにはその制約がない。ドコモの戦略として積極的なエリア展開が可能な4.5GHz局を積極的に展開してくるのではないかと推測される。8001局のうち4.5GHzが半分以上になるのではないか。下の画像は総務省の周波数割当表の一部で数字の単位はGHzだ。濃いピンク色は携帯通信で使用できる帯域幅を表している。ドコモが割り当てられた4.5-4.6GHzだけは周波数共用しておらず、同一週数帯においては干渉の心配がないのだ。一方で3.7GHzはオレンジ色の固定衛星の周波数と共用しているため干渉を避けるように展開する必要がある。

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総務省よりhttps://www.tele.soumu.go.jp/resource/search/myuse/usecondition/wagakuni.pdf

 

KDDI auの戦略

割当周波数:3.7GHz/4.0GHz(100MHz)、28GHz(400MHz)

開設局数:3.7GHz/4.5GHz(30107局)、28GHz(12756局)

KDDIは3.7GHzと4.0GHzで100MHzずつ、28GHzを400MHz獲得してる。ドコモと同じく合計600MHzの割当だ。ドコモとは異なり3.7GHz帯(4.0GHz含む)を合計200MHz持つ国内唯一のキャリアとなった。先も書いたように3.7GHz帯は衛星通信と同じ周波数を共用しているため、干渉を考慮し開設していく必要がある。そのためKDDIの戦略はスモールセルと呼ばれるカバー範囲の狭い基地局を大量に設置して細かくエリアを展開していくものと思われる。下記の5G設備投資の額を見るとKDDIが異様に高くなっているが、これはスモールセルを大量に設置する必要があるからだと思われる。

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ケータイWATCHより

5G基地局投資、2023年度には1000億円の大台を突破へ - ケータイ Watch

ここまで見ると3.7GHz帯にデメリットしかないように感じるが、メリットとしては国外の多くのキャリアが3.7GHz帯を5Gに採用していることにある。米国、中国、韓国、欧州、日本など多くの国が3.7GHzを採用してるが4.5GHzを採用している国は今のところほとんどない。これは海外発売の端末が4.5GHzに対応されない可能性があることを示している。

 

Softbankの戦略

割当周波数:3.7GHz/(100MHz)、28GHz(400MHz)

開設局数:3.7GHz/4.5GHz(7355局)、28GHz(3855局)

Softbankは3.7GHzを100MHz、28GHzを400MHz獲得してる。3大キャリアの中で唯一500MHzの割り当てになり、ドコモとKDDIより一歩劣ると評価された形だ。Softbankの戦略としては新規に割り当てられた周波数をあまり展開していく気がなく、4Gの周波数と5Gの周波数を共用させるDSSという技術を使って5Gエリアを展開していくつもりだ。DSSを使えば、5G特有の高周波数を使う必要もなく、5Gのエリアを安上がりで展開できるため見かけ上のエリアは広くなる。しかしデメリットとしてはあくまで使用するのは帯域幅の狭い4Gの周波数なので、通信速度は劣ります。Softbankからは質を下げてとにかくハリボテの5Gを安く提供しようという思惑が見て取れる。

 

楽天モバイルの戦略

割当周波数:3.7GHz/(100MHz)、28GHz(400MHz)

開設局数:3.7GHz/4.5GHz(15787局)、28GHz(7948局)

楽天モバイルは3.7GHzを100MHz、28GHzを400MHz獲得してる。楽天の特徴としては最後発のキャリアであり、既存の4G基地局をほとんど持っていない点にある。そのためDSSを採用したとしても効果は薄いと見られる。楽天の戦略としては4Gと5Gを対応させた基地局を同時に展開していくことで他キャリアより効率的にエリア展開することだろう。楽天はマイグレを意識することなく最新の基地局を初っ端から導入できるので、他キャリアにありがちな既存基地局の撤去→最新の基地局と交換というフローを踏まなくて良いので高速にエリア展開できるというわけだ。資金力のない楽天が3大キャリアに攻勢をかけるにはこのスピード感が重要だと思う。

 

さいごに

以上が私見たっぷりの各社の5Gエリア展開戦略だ。各社の思惑通りに事が運ぶのかは今後の努力次第だろう。ユーザーとしては楽しみに見守りたい(´Д` )