OTTプレイヤーと通信事業者の提携に見る強かな戦略
昨今通信事業者(以下キャリア)とOTT(Over-the-top )と呼ばれるプレイヤーとの間でサービスの提携が見られるようになってきた。OTTの例としてはNetflixやAmazonなど音声や動画のサービスを提供する事業者が当てはまる。ご存知の通りキャリア自体も自身で動画や音声などのコンテンツサービスを提供する中で競合と提携するのはメリットがないように見える。その腹の中を推測してみる。
Ferretより
OTTの台頭
近年Netflix、Amazon、YouTubeなどのOTTプレイヤーの台頭が目覚しい。動画配信サービス「TELASA(テラサ)」サービス開始 - 通信回覧板でも書いたが、OTTプレイヤーのシェアが年々増加傾向であり、これからも順調にシェアを伸ばしていくものと予想される。その中でキャリア発コンテンツはシェアを減らし、もはやキャリアが提供するコンテンツではOTTに太刀打ちできない状況に来ている。
キャリアの弱み
キャリアは移動通信ネットワークの構築、運用保守にかけては20年以上かけて蓄積されたノウハウがあり、強みである。実際このネットワーク構築の強みを活かし、各キャリアから法人向けにソリューションとして提供している。しかしながらコンシューマー向けのコンテンツにかけては3Gの時代こそLISMOや着うたなどのプラットフォーム提供者になり得ていたが4Gの時代はどうだっただろうか。おそらくほとんどのユーザーはOTTが提供するコンテンツの方を使っているのではないだろうか。これは特定のキャリアの問題ではなく、全キャリアに共通して見れる傾向だ。では何故キャリア発のコンテンツが相対的に弱くなったのだろうか。複数要因はあると思うが、一番の理由はキャリアは移動体通信の運用こそが本業であり、コンシューマー向けのコンテンツ開発にかけては大してノウハウがなかったのだ。それに加えてOTTプレイヤーは利益度外視で安く使いやすいサービスを提供してくるため、大して安くもなく使いやすくもないキャリア発のサービスは使う人が減少していったというのが現実だろう。
提携に見える双方のメリット
まずキャリア側のメリットを考えてみよう。先程も話したようにキャリアはコンシューマー向けのコンテンツに弱みを持っている。そこでコンテンツに強みを持つOTTプレイヤーと提携することで自社の弱みを補い、ユーザーに自社と通信契約をしてもらうというのがキャリア側の思惑だろう。例としてはドコモのAmazonプライム1年間無料が分かりやすいだろう。
ドコモより
キャリアの中でも積極的OTTと提携しているのはKDDIだろう。確認されてる中で、Apple、Netflix、YouTubeと提携し、料金プランを打ち出している。
auより
ちなみにソフトバンクは特にOTTと提携しての料金プランは見られない。昔はNetflixをソフトバンクだけがショップ店頭で契約できたようだったが、いつの間にかKDDIにNetflixを持っていかれた状態だ。
次にOTT側のメリットを考えてみよう。OTTにとってキャリアは特に組む必要がない相手に見える。その点はOTTの弱みを見ることで分かる。キャリアだけに注目してると通信契約の解約率が1%未満なのはそんなに驚く数字ではないが、他業者から見るとこれは驚くほど低い解約率なのだ。下の画像は2019年のNetflix解約率だが、月間で3%程だ。キャリアは3ヶ月で1%未満であることを考えると高い数字だ。
Business insiderより
ネットフリックス、解約率の急上昇止まって一安心。ディズニープラスへの切り替えにはまだまだ警戒 | Business Insider Japan
つまりOTTは解約率の低いキャリアのプランとバンドルすることでサービスの解約率を下げたい狙いがあるようだ。
さいごに
このように一見関係のなさそうな業種同士の提携もデータを見ると双方にメリットのある提携だということが分かる。キャリアのビジネスモデルはストックビジネスになるのでサブスクリプションサービスとの提携と相性が良い。今後OTT以外のサービスとも提携することは十分に有り得そうだ